忍び寄る影。

10月20日　天気…晴

ようやく学校での生活に慣れた、その帰り道。
能力者たる所以か、或いは過去の産物か…。
眠都の研ぎ澄まされた感覚が、何者かを見つけた。

後を付けられている…？
素早く振り向くと、建物の陰へ退く影がひとつ…見えた。

「そこにいるのは誰？出てきなさい」

そう誰何するが、当然のように返答はない。

「…まぁ、いいわ」

コツ、コツ。
靴裏でアスファルトを鳴らしながら、何者かがいる方へと歩を進める。

微かに聞こえた、舌打ちの音。
遠ざかる何者かの気配。

「…ふぅん？逃げ足はなかなか速いみたいね」

残されたのは、主のいない陰と、自身の影。
もう、陰からは誰かがいた痕跡すら見いだせない。

「ぁ、あまり遅くなるとまたお小言を貰っちゃう…。早く帰ろっと」

踵を返すと、今の自分の居場所へと向かう。
夕日に照らされた道を小走りに進む、影ひとつ。